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焼酎談義(杜氏の話)のソース

Subject: [qsob 219] 焼酎談義(杜氏の話)
Date: Sun, 14 Dec 2003 16:38:11 +0900
X-Mailer: Lotus Notes Release 5.0.4a  July 24, 2000

福田です。こちら川内もかなり冷えてきました。
 お湯割りが美味しい季節です。

 薩摩半島のとりは、「杜氏の里笠沙」という蔵元。
 その前に焼酎造りにはこだわりの原料ばかりでなく、人が必要。
 つまり「杜氏」の力が欠かせません。今日は杜氏の話を中心に焼酎談義を。

 鹿児島県内で杜氏の里といえば、金峰町阿多と笠沙町黒瀬の二つが知られて
 います。それぞれ「阿多杜氏」、「黒瀬杜氏」と呼ばれ、県内だけでなく
 九州各地や四国にまで焼酎造りに出かけていました。
 しかしながら近年、酒造りの機械化や蔵の大規模工場化が進む中で杜氏や
 蔵子の数は減少の一途をたどっています。
 ピーク時の昭和30年代には阿多、黒瀬合わせて500人に達した杜氏の数
 も、今では黒瀬に30人余りを残すのみ。その黒瀬も過疎・高齢化が深刻で
 後継者は育たず、現在一番若い世代で50歳代といいます。

 黒瀬は加世田の先、東シナ海に突き出した野間半島の中央、山あいの斜面に
 家々が寄り添うように建つ集落です。背後には野間岳がそびえ、わずかな
 棚田と段々畑が目立ちますが、知らなければ見過ごしてしまいそうな山里です。
 ですが、この耕地が出稼ぎを生み、明治末期に始まる杜氏の歴史のきっかけ
 ともなったのです。

 「集落に受け継がれてきた技術と文化を保存継承しなければ、杜氏の里は
 廃れてしまう。」
 そのような危機感から1993年、笠沙町と民間が第3セクターで創業した
 のが「杜氏の里 笠沙」です。
 焼酎造りに伝承展示館を併設し、蔵は昔ながらのかめつぼ仕込み、木樽蒸留
 にこだわった焼酎造りを行っています。

 この蔵の一番の売れ筋銘柄「一(いっ)どん」は、ここの杜氏であった片平
 一(はじめ)の愛称にちなんだ名前。野間岳からの岩清水と南薩産のコガネ
 センガンを用い黄麹で仕込んだ逸品です。
 限定生産ゆえ、往復はがきによる抽選予約でしか、手に入れることはできま
 せん。独特の瓶の形と、柔らかい黄麹の味は焼酎飲みなら必ずとりこになり
 ます。自分は、うちの所長に1回飲ませてもらったことがありますが、芋の
 香りの漂う美味しい焼酎でした。

 現地で購入できる銘柄はその名もずばりの「黒瀬杜氏」(白麹)と「さつま
 すんくじら」(黒麹)。すんくじらとは鹿児島弁で「隅っこ」、という意味。
 薩摩半島の隅っこに当たる笠沙町を表現した名前です。どちらも丹念に造り
 上げた焼酎でもちろんお薦めです。

 もう少し付け加えさせてもらいますと、この野間半島はうちの会社にも関係
 の深い場所なのです。現在1基300kW、計10基の風車があり、合計で
 3000kWの風力発電をしています。
 鹿児島に居る間に一度は行ってみたいと思い、昨日のメールの話ではありま
 せんが、毎日連続で会社に出ていたんでは体がもたんと、定検の合間をぬって
 この秋の連休の1日を使い、風力発電所とこの焼酎展示館を訪ねました。
 一どんは外れましたが上の2つの焼酎を買って帰り、寮でたしなみました。


 現代での違った意味での杜氏にあたるのは若き経営者たち。
 農業大学の農学部で醗酵学などを学び、会社勤めなどをして現代の市場を肌で
 感じ、ふるさとに戻った二代目がいます。
 このような新しい感覚から、従来とは違った現代的で個性的な焼酎が生み出さ
 れて行くのだと思います。

                       福田 剛